kakasi-1994-katu10のブログ

薪ストーブとお山とテレマーク

薪焚くひとの思案とき 5W1H -3          #5

      

                                                 あぐまない?

  スイートスポット 


 25シーズン前に薪ストーブを導入し、「さァ焚くぞっと」20年半はただ闇雲に薪を焚いてきた。闇雲というのは、薪が燃焼するには、エアー供給と煙突の引きが大きく関わる環境下で、この二つのファクターのパラレルな調整を如何にしたらよいかわからなかったことである。しかし4年半前に「Jotul ファイヤーライト」から「同 F-600」に交換してからは一変した。
 退職後、頭の仕事に関するアロケがすっかり抜け落ち、精神的に自由なときが出始めた頃、ストーブ導入時についてきた横文字のマニュアルを見て、薪焚きの原理原則に触れたことだ。 前回ブログで「JotulF-600の取説」の抜粋について記述をしたが、「かれら」がどのような環境下で、この諸元を導いたかのドキュメントはないし、私に与えられたものは、英文の取説2冊(一般、使用用)と和文のものと(後述)で、「How」に関するものは、英文のものを拾い読みするなかで、この「取説」と煙突高は最低15 feet (4.57 m)以上必要と。これくらいの代物であった。
 ストーブの性能については、老舗のJotulが、自分には想像がつかないような条件下で出した結論であるから素直に受け入れざるを得ない。 問題は、各戸に設置されたストーブは、「かれら」が実施した環境下での性能実験はなく、次の様々な状況下で焚かれることであり、1煙突高(ドラフト)、2エアーサプライ(部屋の気密性等)、3薪の乾燥具合(規定の含水率以下)、4薪焚く人の熟練度等、が考えられる。 「1」以外の各項目はおのずと解消できることなのでここでは触れないが、「1」のモヤモヤを如何に把握することが喫緊の課題であった。


             煙突ダンパーによるドラフトの調整


 この「取説の一部」のサマリーは「薪の追75min(1時間15分)間隔で、1回当たり重量3.6kg、4本である。エアーベントが50%のときの公称発熱量は9.8kWであり、時間当たりの消費は2.9kg/hrである。」であり、今回はこの取説から「How」のひとつに関する疑問の解決を模索した過程を述べる。糸口は不確定だった変数のひとつである「エアーベント50%」を固定すれば後はドラフトの変数から標準値に近い位置を探し出せるということである。 まず我が家の煙突のドラフトを Jotulの想定する状態に近づけること、それは煙突ダンパーを仕込むことで事足りた。


 我が家のロケーションは住宅地の一般住宅で、南北に流れる中河川の右岸端、季節風の影響を直接受けること、下流側で風上にあたる建物の屋根の影響で、負圧帯となることが考えられたため、煙突の引きが強くなることを覚悟で影響のない高さまで立ち上げた。当初はダンパーでこのドラフトを調整するまでには至っていなかった。したがって後継機の導入までの、20年半はストーブ温度がなかなか250℃を超えないというフラストレーションをいだきながらも、自分は現職中、妻は半日のパート務めでストーブへの依存度は朝と晩だったこともあり放置していたが、退職と後継機取替え時期とあいまってダンパー導入に至った。
 ダンパー導入後は、「取説」通りの要領で実施し試行錯誤を行い、最高ストーブ表面温度(280~300℃)に達したときのダンパー開度を探し出した。 ひたすらエアー50%、一回3.6kg/4本、75min間隔で。 薪のたき方は「下図の和文マニュアル」を忠実に実行し、1週間ほどであらかたのダンパー開度を把握した。煙突のドラフトをダンパーにより補正し、言わばニュートラルポジションを同定したことで、ようやく土俵にあがれた気分だった。 今後薪を焚くうえで考慮すべき項目がひとつ解消し、後は焚きつけ後の「how」に移行していった。


              「和文マニュアル」


 「下図」は、焚きつけに関係あるところだけ抜粋したが、要件は4箇所であるが、見にくいので、書き出すと黄3箇所、赤1箇所の網掛け部分である。
 1)項目4(調整)は、「二次燃焼用の空気吹き出し口の前面の炎が、黄色になっているのがわかるはずです」。 
 2)欄外「Good Advice!」の欄は、「薪を長持ちさせるために空気を絞って燃焼させる方法はおすすめしません。ノルウエー語で「ピーネフィーリング」といって、言わば「首を締め付けられて、息がやっとできるような状態」とたとえられます。 
 3)項目5「鋳物が十分にあったまった状態(表面温度150~200℃程度)を確認して扉を閉めてください。」 
 4)同6(薪の追加)は、基本的に薪が一番高い温度を発するのは、おきの状態です。炊きすぎを防ぐため、おきの状態で本体の温度が下がった時に薪を追加してください。
 通常の適正温度は200~320℃である。
 上述中で注目すべき項目は、1)と3)である。


 1)については、「後継機導入後はオーロラバーンにあこがれて、ダンパーを絞り、エアーベントを全閉近くまで閉じいろいろ試してみた。焚き付け時以外は、煙を意識したことはないが、このような焚きかたをすると、極端にエアーを絞ることとなり、少しだが白い薄い煙が出る。私は、燃やしている薪が熾きになる前に継ぎ足しはしないから、オーロラバーンで燃焼させるには新たに薪を投入するわけで、しかも継続時間は長くても30分程度のもの、所詮「ウタカタ」であると考え日常的には敢えてしない。
 このストーブの副名でもある「ファイヤーライト」の名のごとく黄色で炉内はもちろん、照明を落とした室内おも明るく照らす、あたかも何燭光もの蝋燭や灯油ランプの揺るぎない炎で部屋を灯すような燃焼こそがベストだと。
 3)については、焚きつけてからストーブ温度が130℃くらいに達し始めると、バッフル下部の4本のチューブの奥側から順番に手前に黄色の炎が噴き出し始めるのを確認でき、時間の経過とともに温度は、150℃を超えだしこのストーブのいわゆる暖機運転が終わり通常運転に移行する。言い換えれば、130℃あたりから二次燃焼が始まり、150℃を超えればJotulが担保する通常燃焼であるということだ。もちろん200℃辺りまで引っぱっても誰はばかることはない。
 最後に蛇足ではあるが、通常運転時の適正温度の上限を320℃としている。構造が鋳物であるので実際のキャパはモット高いと思うから、本体に対してはさほど気にしていないが、我が家の煙突はストーブ排気口との離隔が50cmあり、90°エルボーとT字管(下部は蓋)、二階の煙道シャフトに点検用T字管をかましていて、どうしても負荷は異形管に集中することが懸念されるから、熱ダメージのリスクを考え本体温度の上限を250°としているし、我が家ではこれで十分である。また二代目導入時に20年半使用したT字管が劣化し二重煙突の中側の溶接部がはがれていて交換(非常に高価)したことも、常に留意し、末永く道具をもたせることが肝心だ。



         ダンパーによる煙突ドラフト調整の結果


 試行錯誤のすえ同定したポジションは、全開(垂直)100%を0°とすると「補正部分」は55°のあたりであった。φ150の煙突の全断面積に対する、投影面積(楕円)を計算すると43%程の負荷であった。ちなみの負荷50%では開度が60°弱あたりとなる。
 またドラフトによる煙道内のQ(給気速度)は下の式-1でえられるが、h(高さ)以外の変数を考えないのなら、単純にh(高さ)の「平方根」で対比できる。ためしに下表にて計算したところ、以下の結果となった。Jotulは最低煙突高を15feet(4.6m)としていることから、あくまでも推測の上でこれを基準とし、我が家の煙突高h=14.7mを比べると4.6:14.7のそれぞれの平方根は2.14:3.83で、その比は1:1.8となる。つまり1/1.8=0.56であり我が家の煙突に50%強の負荷をかければ計算上は、ほぼイコールとなる。
          ※画像はマウス右クリックで「新しいタブで画像を開く」で拡大します

                  式-1


 あくまで仮説であるが、Jotulの公表している公称発熱量の結果が、煙突高15feet(4.6m)で出したとしたら、私の試行錯誤と、算術的結果が一致したと考えられる。


 探し出したダンパーのレバー位置50~55~60°部とエアーベント50%部にポイントを打ち「スイートスポット」とし、これを通常運転時の調整操作の「ニュートラルポジション」とした。

                                


                                     つづく

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